なに熱くなってんだか。

 先日、ラジオで「生ハムメロンはありかなしか」ということが話題になっていました。私の生ハムメロン初体験は、ばあちゃんの葬式が終わったあとの・・・なんて言うんでしたっけ? みんなで食事をするやつです。精進落とし? ・・・まあ、おいておきます。そこで初めて食べました。今でもそうなのですが、私はデザート以外で果物を料理されるのは耐えられない性分だったのですが、「生ハムメロン」の持つ語感および高級感に惹かれてしまい、口にしてしまいました。
 それ以来、私の「生ハムメロン」幻想は打ち砕かれてしまったのですが、その一年後にまた、口にすることになりました。
 そのとき、私はイタリアにいました。前後の状況はあまり覚えていないのですが、誰かの家のパーティーに招かれ、そこで生ハムメロンに再会しました。生メロがレストランで供されるときはだいたいメロンに生ハムが巻かれた状態で出てくると思いますが、その家では深めのガラスの器に、無造作に切られた2cm四方のメロンの中にこれまた無造作に生ハムがまぎれこんでいました。
 これは生ハムメロン・・・一年前の忌まわしい記憶が蘇って・・・まあ、こなかったんですけど、あのときは正直にいってうまいものだとは思っていませんでした。別々に食べたほうがよっぽどおいしいと思いました。だから、巻かれていないことを幸いに、メロンだけ食べようと思いました。けれども、そうした私の様子を察した家の人が、一緒に食べるように勧めます。というより強制します。やむなくフォークに生ハム、メロンを突き刺し、口に運びました。

 なぜ、生ハムメロンを毛嫌いする人がいるのでしょうか。
  ・果物を料理の食材に使われるのは耐えられない
  ・イタリア料理店で高い金を払って食べたのに大してうまくなかった
  ・とにかくイヤ

 まあ、人それぞれだとは思いますが、そういう人たちに「日光見ずして結構というなかれ」という言葉を送りましょう。イタリアで生ハムメロンを食べずして生ハムメロンを語るなかれ。イタリアでしか鮨を食べたことのないイタリア人に「鮨はありえねえな」と言われると、私はちょっとカチンときます。
 私がイタリアで食べた生ハムメロンはそれはそれはおいしいものでした。メロンは淡いオレンジ色で、見た目は熟してないんじゃないかと思うけれども、果肉に歯を立てようとすると、あっさり食い込み、それと同時に舌の上に甘いけれども、くどくない、さっぱりとした果汁があふれてきます。生ハムは変な香料のにおいがせず、豚肉のうまみが凝縮されており、生ハムそれだけでたべるとややもすると塩辛いのですが、メロンの果汁がうまく中和してくれます。この料理が美食の国で生まれたのもさもありなん、そう実感した瞬間でした。
 おそらく、日本の生ハムメロンがいまいちぱっとしないのは、素材の違いにあるのではないでしょうか。日本とイタリアのメロンは違います。イタリア料理のメニューに生ハムメロンがあるからただ客に提供している日本のレストランがあるなら、それが本当においしいものなのか、他にもっと相性がよい食材がないものか、研究してほしいものです。いや、もちろんおいしい生ハムメロンを出す店はあると思いますが。

 というか、ある料理を挙げて、アリかナシかを問うのはいかがなものでしょうか。好きか嫌いかならわかりますが。カレーだって、材料や調理方法でいくらでもおいしくもまずくもなるでしょう? カレーはアリかナシか。どう答えますか。