恥を忍んで

イタリアへの交換留学に旅立つ三ヶ月前、本気で留学を辞退しようと思ったことがある。実際に口にもした。在学していた大学において、私がその交換留学の第一期生であったからかもしれないが、事務手続きでちょっとしたトラブル(結果的にはトラブルでも何でもなかった)に見舞われ、そのために辞退しようと思った。ただ、それは初めての異国での生活に対する不安、自分の語学力の自信の無さに基づく逃げ口上であった。
 幸い、家族を始めとした周りの人たちの叱咤激励(ほとんど叱咤だったけども)があったおかげで不安を抱えながらもイタリアへ旅立つことができた。そしてその不安を差し引いても有り余る愉悦、人生に彩を与える経験、かけがえの無い友人を得ることができた。
 
 今こうして思い出している間にも転げまわりたくなるくらい恥ずかしく、数多くある消し去りたい記憶の一つであるが、このおかげで現在感じている、小さくない不安に相対することができるのだと思う。この不安の向こう側には、必ず、自分にとって宝物と呼べる時間が待っていると知ったから。

 出発まであと4日。これからの2年間、私の、そして仲間たちの約束された地での安泰を期して、明日少し遅い初詣に出かけることにしよう。











 荷造り、全然進んでナイヨ(´;ω;`)