正常と異常の境目

性的唯幻論序説 (文春新書)
巷間では「正常位」という言葉は明治時代から使われ始めたということらしいですが、誰がそのように名づけたのかはわかっていません。ちなみにいわゆる「四十八手」には正常位という技(?)の名前はありません。字面から「正常位」が性行為におけるもっともポピュラーな方法だと思いがちですが、これにはどうやらキリスト教カトリック)の影響があるらしいです。英語では「missionary position」と訳されます。確かにこのあたりからキリスト教のにおいがしますね。カトリックでは快楽のための性行為を禁止していた(いる?)けれども、やむを得ず(つまり生殖のため)行う場合は正常位ですることを条件に許可したらしいです。では、なぜ「正常位」が「正常」なのでしょうか。
陸上生活を営む哺乳類の性行為(というか交尾)はほとんどが後背位で行われます(例外があったら教えてください)。カトリックとしては人間と動物の区別のために正常位を正統としたのかもしれません。けれども、それなら女性上位(騎乗位)が正常位として採用された可能性もあるはずです。前掲書の筆者は正常位を「女が押さえつけられて運動性を奪われ、もっとも無力な状態になり、男が女をもっとも支配しやすい体位であ」るとし、また「強姦のほとんどはこの体位で行われると思われる」と続けています。そういわれれば、後背位や騎乗位なら、女性が性行為を拒否したければ、正常位よりも逃れられる可能性は大きいと思われます。最近のAVの強姦ものはフィクション性を強調するために正常位以外の体位で撮影されるということですが、そのことが逆に「ヤってるうちにオンナも気持ちよくなってくるさ」「いやよいやよも好きのうち」みたいな勘違いを助長することになるのではないでしょうか。

ともあれ、少なくとも日本においては性行為は男のもののような気がします。これからどうなるかわかりませんが。